飛蚊症
飛蚊症とは、視界の中に、実際は存在しない黒い点や糸くず、蚊のようなものが飛んでいるように見える状態です。
見えるものの大きさや形状は様々で、視線を動かすとこれら対象物が追いかけて来るような動きを見せることもあります。
飛蚊症の症状
- 視界に黒い糸くずのようなものが見える
- 蚊が飛んでいるように見える
- 視界の一部にもやがかかっている
- 視力が低下した
- 視線を動かすと黒い対象物が追いかけて来るように見える
飛蚊症の原因
加齢や炎症などにより、硝子体が濁ることが原因で起こると言われています。その他、網膜裂孔・網膜剥離、硝子体出血、ぶどう膜炎の症状として現れることもあります。
最も多いケースは、加齢による生理的な要因です。
加齢に伴い硝子体の成分が変化し、硝子体の一部にしわのようなものができると、そこで濁りが生まれて飛蚊症の症状が現れるとも言われます。
飛蚊症の治療法
まずは飛蚊症の原因が生理的なものなのか、病的なものなのかを特定することが大切です。
生理的な要因が原因の場合は経過観察によって改善することもありますが、疾患が原因の場合には、疾患を特定し、適切な治療を行います。
ぶどう膜炎
ぶどう膜炎とは、ぶどう膜が炎症を起こすことで起こる疾患のことです。
代表的なものとしてサルコイドーシス、ベーチェット病、原田病があり、3大ぶどう膜炎と呼ばれています。
ぶどう膜炎の原因
3大ぶどう膜炎であるサルコイドーシス、ベーチェット病、原田病は、いずれの場合も免疫異常による疾患です。
主な症状としては、サルコイドーシスは目を含む全身の臓器で肉芽腫が出現します。
ベーチェット病はぶどう膜の炎症だけでなく、口腔内や陰部で潰瘍ができます。
原田病は急激に視力な低下と髄膜炎、難聴を起こした後、皮膚で白斑が起こったり、頭髪が白髪・脱毛したりします。
これらのうち、サルコイドーシスとベーチェット病は、国に難病指定されています。
ぶどう膜炎の治療法
特殊なぶどう膜炎を除き、基本的な治療は、副腎皮質ステロイドによる消炎治療になります。
炎症の部位や程度、片眼性か両眼性かにより、副腎皮質ステロイドを点眼治療か内服治療によって行います。ぶどう膜炎は、重症度やその後の経過に個人差が大きく見られる特徴があります。
慢性的なものや再発性を伴うぶどう膜炎の場合は、長期間ステロイド治療を継続する必要があります。副腎皮質ステロイド以外の治療法としては、免疫抑制薬、生物学的製剤を使用することもあります。
ぶどう膜炎は完治させることが難しい疾患とされており、治療が長期間に及ぶ傾向にありますので、辛抱強く治療を続けることが大切です。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、糖尿病の3大合併症の1つとされています。
自覚症状のないまま緩やかに進行することが多く、本人も気づかないうちに視力が低下して、失明を起こすこともあります。
治療は、血糖値を適切にコントロールすることや、眼底的治療を行うことで、発症や進行を抑制することはできますが、網膜は一度障害を受けると改善は困難です。早期発見・早期治療が重要になります。
糖尿病網膜症の症状
- 視力が低下した
- 目がかすむ
- 視界に黒い糸くずのようなものが見える(飛蚊症)
- 視野が狭くなった
- 視界の一部分が暗くて見えにくい
糖尿病網膜症の原因
糖尿病網膜症は糖尿病の合併症ですので、高血糖状態が続くことで網膜の毛細血管が壊れてしまうことで発症します。毛細血管が壊れて出血を起こすと、視力の低下や視野の狭窄などの症状が引き起こされます。
糖尿病網膜症の治療法
糖尿病の合併症ですので、まずは血糖値を適切にコントロールすることが重要ですが、急激に血糖値を改善すると、かえって症状を進行させてしまう可能性があり、注意が必要です。血糖値の他にも、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病の管理も重要です。
このような生活習慣の改善を行いつつ、必要に応じて網膜光凝固術、抗VEGF薬硝子体内注射、硝子体手術などの治療を行います。
網膜静脈閉塞症
網膜静脈閉塞症は、網膜内の静脈の血流が、血栓によって詰まってしまうことで引き起こされる病気です。
原因は、高血圧や糖尿病、高脂血症などによって、網膜内の動脈の壁が厚く硬化することで、動脈に隣接している静脈が圧迫されて血流が滞ることによります。
その結果、血液が凝固して血栓ができ、静脈を閉塞してしまうことで静脈内の圧力が高まり、網膜に血液や水分が漏れ出て眼底出血を起こしたり、網膜がむくんだりします。
なお、動脈硬化の原因で最も多いのが高血圧になります。よって、網膜静脈閉塞症は中高年以降に発症することが多い傾向があります。
網膜静脈閉塞症の原因
網膜静脈閉塞症の原因は、高血圧や糖尿病、高脂血症などによって、網膜内の動脈の壁が厚く硬化することで、動脈に隣接している静脈が圧迫されて血流が滞ることによります。
その結果、血液が凝固して血栓ができ、静脈が閉塞されてしまいます。
閉塞が起きた静脈の部位により、網膜中心静脈閉塞症と網膜静脈分枝閉塞症に分けられます。
網膜静脈閉塞症の治療法
生活習慣の乱れが発症の大きな起因となっているため、まずは生活習慣の改善を行い、その上で薬物療法にて高血圧や脂質異常症の改善を図ります。
網膜の静脈が閉塞を起こした直後は、血管強化薬や網膜循環改善薬などを使って、閉塞した血管の血流を回復させるための治療を行います。
視力が低下している場合は、網膜光凝固術、抗VEGF薬硝子体内注射、硝子体手術など治療を行うこともあります。
中心性漿液性脈絡網膜症
網膜の中心には、黄斑という視細胞が集中して視力を司っている部分があります。
中心性漿液性脈絡網膜症は、この黄斑に水が溜まることで部分的に網膜剥離が起き、ものが見えにくくなるなどの様々な視機能障害を引き起こす疾患です。
一般的に30~50代の男性に多く見られる傾向があります。
最初は片方の目だけに起こることが多いですが、しばらくするともう片方の目に起こることもあります。
中心性漿液性脈絡網膜症の
症状
- ものが見えづらい
- 視野が歪む
- 視界の中心が暗い
- ものが実際よりも小さく見える(小視症)
中心性漿液性脈絡網膜症の
原因
はっきりとした原因はまだよくわかっていませんが、精神的ストレス、妊娠、副腎皮質ステロイド薬の投与などが関係していると言われています。
中心性漿液性脈絡網膜症の
治療法
中心性漿液性脈絡網膜症の治療には、まずは内服治療で症状の改善を図り、症状が長引いたり再発した際には、レーザー光凝固術が適用されることもあります。
後遺症として視力障害が残る恐れもありますので、ものが見えづらいなどの症状を感じた際には、早めに受診するようにしてください。
網膜剥離
網膜剥離とは、網膜に穴があいて、その周囲の網膜が剥がれてしまう疾患です。
放置すると網膜が剥がれる範囲が拡大し、窓にカーテンがかかったような状態になって最終的には失明します。
早期に穴が空いた状態が見つかれば、穴のまわりに光凝固を行うことで、網膜剥離を抑制することができます。
網膜剥離の症状
- 視界に黒い糸くずのようなものがチラチラ見える
- 何もないところで光を感じる
- 黒い影が見える
- 視野が欠損している
- 視力低下を起こしている
網膜剥離の原因
網膜剥離は、加齢によって硝子体が剥離することが最も多い原因とされています。糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などの目の病気や、頭部・眼球への物理的外傷などによって引き起こされます。
硝子体とは眼球の中を満たすゲル状の物質ですが、何らかの理由でこの硝子体に網膜の一部が引っ張られることで、網膜裂孔という網膜の小さな穴ができてしまいます。
そのまま放置してしまうと、この穴から網膜とその下の層との間に水分が入り込んでしまい、網膜裂孔の周囲の網膜が徐々に剥がれ落ちていき、網膜剥離となります。
網膜剥離の治療法
網膜裂孔が起きた状態で発見されれば、レーザーによる網膜光凝固術あるいは網膜冷凍凝固術によって網膜剥離へ病気が進行することを抑制できます。
すでに網膜剥離が起きている段階では、手術による治療が必要になることが多いです。網膜剥離はそのまま放置すると最終的に失明する可能性の高い病気ですので注意が必要です。
網膜色素変性
網膜色素変性とは、視細胞や網膜色素上皮細胞などの網膜細胞に異常が起こり、視野が狭くなる、視力が低下する、色覚異常などを引き起こす疾患です。
数年〜数十年という長い期間をかけて徐々に症状が進行していく特徴があります。
網膜色素変性の症状
- 視野が狭くなった
- 視力が下がった
- 光がまぶしい
- 暗い場所でものが見えづらい
- 色が識別しにくい(色覚異常)
網膜色素変性の原因
網膜色素変性の原因の多くは、遺伝的要因と言われており、国から難病指定を受けています。
網膜色素変性の治療法
現在、網膜色素変性に対して有効な治療法はないため、症状を抑制したり病気の進行を遅らせる対症療法が中心となります。
網膜色素変性は、合併症として白内障・緑内障を誘引することも多いため、定期検査を行なって経過を観察することが大切です。
加齢黄斑変性
加齢黄斑変性とは、黄斑という部分に異常な血管が生えて視覚障害を起こす病気です。
近年、日本でも患者数が増えてきており、欧米では失明原因の第一位となっています。
片目で発症するため本人も気づきづらいことが特徴です。定期的に片目でものが見えているか確認すると発見も早まるでしょう。
加齢黄斑変性の症状
- 視力が低下した
- 視野が歪む
- ものがぼやけて見える
- 視界の中心が暗い
- 色が識別しにくい(色覚異常)
加齢黄斑変性の原因
病名の通りに加齢に伴って生じる疾患ですが、原因はまだはっきりとわかっていません。
遺伝的要素や、喫煙、紫外線によるダメージ、食生活などの環境要素が起因しているのではないかと指摘されています。
加齢黄斑変性の治療法
萎縮型に対する治療方法は確立されていませんが、滲出型に対しては抗VEGF薬硝子体内注射、網膜光凝固術、光線力学的療法などの治療法が効果的です。
早期発見・早期治療が重要で、治療が遅れると網膜に障害が残る可能性がありますので、注意が必要です。